ドイツ語圏文化セミナー118

映画『審判』公開&カフカ生誕135周年記念 特別トークショー

現代×カフカ×日本

ジョン・ウィリアムズ ×マライ・メントライン ×川島隆  (監督)             (職業ドイツ人)     (ドイツ文学研究者)

Jemand mußte Josef K. verleumdet haben, denn ohne daß er etwas Böses getan hätte, wurde er eines Morgens verhaftet.
“誰かがヨーゼフ・Kを中傷したに違いない。なにしろ、何も悪いことはしていないのに、ある朝、逮捕されたのだから。”           
      ーー川島隆 訳 『ポケットマスターピース01 カフカ』(集英社)


不条理文学の代表作家といわれる、フランツ・カフカの長編小説『審判』(原題:Der Process)はこんな冒頭から始まります。

『審判』はこれまで何度も映画化、舞台化されてきましたが、ジョン・ウィリアムズ監督は「そこに描かれた社会の空気感が、今の日本ととてもよく似ている。そして、彼の発する「自分は何者なのか」「人間は何のために生きているのか」という実存主義的な問いが、とりわけ現代の日本人に必要だと感じた」との信念のもと、現代の東京を舞台に
映画『審判』を作り上げました。この作品がいよいよ6月30日(土)から渋谷ユーロスペースで公開されます。

奇しくも今年はカフカが生まれて135年に当たります。そこで、カフカの生誕135周年と映画の公開を記念して、緊急スペシャルトークショーを開催いたします。登壇者はジョン・ウィリアムズ監督、日本におけるドイツ文化の広報部長であり、カフカへの思い入れは人一倍と語るマライ・メントラインさん、そしてドイツ文学研究者として数々のカフカ研究書や翻訳を手がけられている京都大学の川島隆准教授です。カフカの人生や世界観から現代日本社会(システム)が抱える数々の問題、それに馴れてしまった日本人への問いかけなど、熱く語り合って頂きます。

聞けば必ず小説を読み(返し)、映画を観たくなること必至のスペシャルトークショー!たくさんの方のご参加をお待ちしております。


◎ 本イベントは上智大学ヨーロッパ研究所との共催イベントとなります。
◎ 言語は日本語です。

                      「審判」公式サイト                                     ©100 Meter Films 2018
   日時:2018年6月29日(金) 18時 開場 18時30分 開演(20時 終了予定)
   会場:
上智大学 中央図書館 L-821会議室 アクセス
   会費:無料
   定員:80名程度
    
   申込方法:オンラインフォームから必要事項をご記入の上、お申込ください。
   問い合わせ窓口:(公財)日独協会 E-mail: event@jdg.or.jp  Tel: 03-5368-2258

   ※ お申し込みは先着順での受付となります(定員に達し次第、期間内でも受付終了となります)
   ※ やむを得ずキャンセルされる場合には、お早目にお知らせください
   ※ 終了時間は延びる可能性があります

  ジョン・ウイリアムズ監督
  © Carl Vanassche
ジョン・ウィリアムズ
監督

プロデューサー、映画監督、脚本家。上智大学外国語学部英語学科教授。英国生まれ、1988 年来日。デビュー作『いちばん美しい夏』(2001年) は、ハワイ国際映画祭でグランプリを獲得し、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門NETPAC賞など、各国の国際映画祭で受賞。佐藤浩市、木村多江主演の『スターフィッシュホテル』(2007年)は、ルクセンブルグ国際映画祭でグランプリ。佐渡島を舞台にした3作目 『佐渡テンペスト』 (2013年)は、シカゴ国際映画音楽祭にてグランプリを受賞。本作が長編4作目となる。
映画「審判」の脚本を書く前、私は「審判」とは全く別の脚本を書き、映画に出演している役者たちと一緒に舞台を行いました。この作品は、特に時代や背景のない世界を、影芝居など様々な方法で超現実的に描いたものです。
はじめはこの舞台の脚本を土台に映画を撮ろうと企画しておりましたが、ある日突然気が変わり、異質な東京の街がカフカの世界観を描くのに適していると思い、映画を現代の東京で撮ることに決めました。
現実的な世界を基盤に非現実的な作品を制作するのは非常に困難でしたが、しかしどういうわけか正しいようにも思えました。
カフカの作品では特殊な要素が多々表現されておりますが、彼は特定の時間や場所を描いていたのではなく、「人間の実情」を描いているのだと私は思います。
朝目覚め、毎日の平凡な生活が実はとても異質であるということに気づく。私にとってはここがこの小説が描く隠喩の中核であり、そこにおもしろさを感じています。
マライ・メントライン
通訳・翻訳・エッセイスト

ドイツ、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州キール出身。NHK教育 『テレビでドイツ語』 出演。早川書房『ミステリマガジン』誌、ドイツ大使館文化サイト『Young Germany』等でドイツ文芸・映像作品の紹介エッセイを執筆。ドイツ公共放送のテレビ局勤務の傍ら、来日作家・アーティストの通訳やドイツマスコミ記事の翻訳、映像作品(新銀英伝など)のドイツ語監修に従事。
著書に『ドイツ語エッセイ 笑うときにも真面目なんです』(NHK出版)
Twitter: @marei_de_pon
 マライ・メントライン
カフカは古びません。今日まで常に「現代心理」の病理的核心を突きつづけています。今回ウィリアムズ監督には、「現代性」と「日本」についていかにカフカ作品をアレンジしたか、また、もともと舞台劇であった作品を映画化したことについての効果や副産物などについて、あれこれ伺いたいと考えています!
川島隆 川島隆
ドイツ文学研究者

京都府長岡京市出身、奈良育ち。京都大学でドイツ語とドイツ文学を学ぶ。NHK教育『100分de名著』のカフカ『変身』回に出演。カフカ『審判』新訳を手がける(『訴訟』のタイトルで『ポケットマスターピース01 カフカ』(集英社)に収録)。主な著書は『カフカの〈中国〉と同時代言説』(彩流社)、『図説 アルプスの少女ハイジ』(共著、河出書房新社)など。現在、京都大学准教授。
カフカの小説は、わかりやすい意味やメッセージを取り出すのが難しい反面、視覚的な要素が強く、よく「映画的」な文学と言われます。しかし、いざ映像化してみようとすると簡単ではない。きわめて具体的なディテールの描写があるにもかかわらず、奇妙に抽象的で捉えどころのない部分が残るからです。それは、カフカ文学が時代と場所を超えて多くの人の心にダイレクトに届く理由の一つでもあるのでしょうが、同じことが映像化のハードルにもなっているのです。
それでも、オーソン・ウェルズ監督の映画『審判』や俳優・演出家スティーブン・バーコフによる『変身』舞台化、山村浩二監督の短編アニメ『田舎医者』など、カフカの世界を視覚化しようとする恐れ知らずの試みは後を絶ちません。今回のウィリアムズ監督の挑戦は、どんな新しい「カフカ」を私たちに見せてくれるのでしょうか。